2014年7月14日月曜日

『地政学を英国で学んだ』

『地政学を英国で学んだ』    奥山真司 集団的自衛権行使容認についての議論の「ウソ」 集団的自衛権の行使容認について、あのマイケル・グリーンらがコメントを書いていたので、その記事を簡単に要約します。 === 集団的自衛権の変更についての10個のウソ by マイケル・グリーン&ジェフリー・ホーナン ●7月1日に日本の安倍首相は集団的自衛権の行使容認を閣議決定した。もちろんこの決定に関して日本の国内・国外で批判が出たが、その反対のほとんどはその変更のニュアンスや結論を理解できていない。 ●よって、ここでは集団的自衛権行使容認の反対派が信じている10個のウソをそれぞれ指摘してみたい。 1, 自衛隊の役割と任務が根本的に変わった。 ●実際の変更点は、自衛隊が同盟国の軍隊が攻撃されたら助けにいくということだが、「新しい三要件」を見てみると、それでも制限はかなりある。 ●基本的に専守防衛の姿勢はかわっておらず、日本の自衛隊の主な役割も米軍の後方支援や防御的なもの(BMDやASW)に限定されている。 ●たしかに米軍とのさらなる一体化につながるかもしれないが、それでも現在の自衛隊の行っていることを根本的に変えるというわけではない。 2,自衛隊が外国での戦争に巻き込まれる ●まず安倍氏自身がこれを否定。批判的な人々が見逃しているのは、この変更が日本と日本人の命を守ることに焦点を当てているところ。結局は専守防衛の域を出ないものだ。 ●これはつまり日本はまだ外国の土地で他国を守るために戦うということを禁じられているということであり、状況が日本の安全保障を脅かすものでなければ、いまだに憲法第九条に則ったものであるということだ。 3,朝鮮半島で緊急事態が発生した際に、自衛隊が派遣される ●韓国政府は自分たちが要請しないかぎり集団的自衛権を行使せず、自衛隊を朝鮮半島に派遣しないよう要求しているが、これは日本政府の解釈と全く同じだ。 ●それより重要なのは、韓国政府が朝鮮半島での有事の際に日米同盟に対してどのようなスタンスをとるのかを明確にしていないという点だ。 4,安倍首相は日本の平和憲法の精神を骨抜きにしようとしている。 ●内閣法制局は国連の51条と憲法9条は矛盾しないと解釈している。いままでの内閣法制局の解釈では「最小限」の防衛に当たらないために集団的自衛権は不適切であるとされてきた。 ●ところが今回変わったのは、同盟国の重要性とパートナーシップが日本自身の安全と生き残りに関わるという点や、また脅威環境やテクノロジーが変化したという点から、この「最小限」に当てはまるということことだ。 ●またこの決定はいわゆる「積極的平和主義」による非軍事分野などでの貢献にも当てはまるということだ。 ●安倍氏が国民に訴えたのは、有事の時に自衛隊が必要なサポートをできないために日米同盟を危機に陥れることはできないということであった。 5,閣議決定までのプロセスは透明性がなく、非民主的に決定された。 ●実際のところ、閣議決定までのプロセスはきわめて透明性の高いものであり、今後数ヶ月間にわたっての決定はさらに透明性のあるものになる。 ●決定までの間に与党協議は2ヶ月間にわたって11回も開催され、代議士たちも参加してさまざまなシナリオが議論されている。公明党の反対のために、自民党は閣議決定の言葉を慎重に選ばなければならなかったほどだ。 ●この間のプロセスは日本のメディアで逐一報じられ、国民もその議論を十分認識できたはずだ。安倍氏も特別記者会見を開いたりしている。 ●しかもこれから国会で自衛隊法などの法整備のための議論が始まるのであり、結果的に法律に制限がかかることは必至だ。 6,今回の閣議決定は憲法改正や9条の排除へと進むことになる。 ●日本の法体制を知らないと、このような批判を行ってしまうことになる。解釈と改正はまったく違うのであり、それぞれ全く別のプロセスがある。 ●しかも現在の日本の国内の状況や議員たちの構成などを考えると、憲法改正は当分ない。 7,日本の再軍備化の始まりだ。 ●とくに中国側からこういう批判が出されており、安倍政権を1930年代の日本のイメージとかぶらせようとしている。 ●ところが70年間におよぶ民主制度と、平和活動への取り組みから考えると、集団的自衛権の行使容認の変更が他国との戦争を開始できるようにするとは考えられない。 ●もちろん解釈変更によって自衛隊がアメリカやオーストラリアなどと軍事的な分野で協力できる範囲が広がるかもしれないが、それでもそのような任務には厳しい制限がかけられたままであろう。 ●重要なのは、集団的自衛権の変更は兵器や部隊態勢の拡大を必要とするわけではないという点だ。 8、今回の決定で地域を不安定化させて平和をそこねる。 ●これは特に中国や安倍氏に批判的な人々から出される批判だが、たしかにさらに深化した日米同盟が地域の平和を乱すと信じきっている人々からすれば、これは正しいだろう。 ●ところが実際は、深化した日米同盟のほうが平和と安定に対する本物の挑戦に対して解決法を出すことになる。 ●ソ連崩壊後にアジア・太平洋地域も大きな変化を経験しており、中国の台頭などによって軍事面を強化する動きが出てきている。 ●とくに中国は海洋面で独断的になってきており、 南シナ海で大きく領海を主張しているだけでなく、公海でもアメリカに挑戦し、東シナ海では日本の尖閣諸島の実効支配に対抗しようとしている。 ●北朝鮮はここ二十年間で核兵器や弾道ミサイルの開発に動いている。 ●このような不安定な見通しの中で、閣議決定は今年後半のガイドライン改正にもつながるものであり、日米同盟の強化は将来の抑止、安定、そしてエスカレーションのコントロールにおける大きな力となる。 9,日本の世論は圧倒的に反対している。 ●メディアなどではそのような印象を受けるが、全般的にいえば日本国民は、自衛隊の制限を排除することや憲法解釈の変更について質問した意識調査では、あまりはっきりした態度をとっていない。 ●ところが自衛隊と米軍のさらなる協力の深化という点にからめて質問すると、50%以上の人々が今回の閣議決定を支持している。 ●いいかえれば、日本国民は過去との決別に不安を抱きつつも、将来への備えも望んでいるということだ。 10,アジアは反対している。 ●これは不正確だ。反対を表明しているのは中国であり、韓国も懸念を表明している。地域をひとまとめにするのは間違い。 ●ただし中国は日米同盟の強化を嫌っているのに対して、韓国は歴史問題がありながらもその重要性を認識している点で違う。 ●この二カ国以外では、その反応は支援的なものから控えめなものまで様々だ。オーストラリアはあからさまに支持を表明。PKOや技術面でも日本との協力関係を模索している ●フィリピンは大統領が最近来日しているが、これも公式に支持を表明しており、シンガポールの外相も変更を支持。 ●インドネシア、マレーシア、タイ、ミャンマー、ベトナム、インドなどの東南・南アジア諸国もプライベートな場では賛成を表明しているが公式にはより微妙な立場を示している。 ● もちろん彼らは前世紀に日本と歴史的に色々とあった国だが、それでも日米同盟の深化や日本との協力関係の強化は歓迎している。 === ちなみに私の集団的自衛権についての考えですが、右は法律論に逃げ、左は論理的飛躍のある感情論を掻き立てるだけ。ただし共通しているのは、そこで争われている「政策」レベルの議論が決定的に欠けていたというものです。 ただし根本的にはアメリカが戦争(アフガニスタン&イラン)に負けつつあることによって、国際システムのパワーがシフトしているという事実が、今回のすべての土台にあると私は考えておりますが。

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