2013年12月25日水曜日

●つば●刀装具の世界

●つば●刀装具の世界 ◆刀装具の世界 http://p.tl/H431 ◆花景透図鐔  http://p.tl/q5eG  江戸初期 縦76.8mm横75.8mm 切羽台厚7.1mm 鉄槌目地丸形地透丸耳 上製落込桐箱入 良く鍛えられた鉄地をほぼ真丸形に造り込み、やや丸みを帯びた耳には一部合わせ鍛えの鍛着面が窺われ所々粒状の鉄骨が現れている。表面には微細な槌目が施され、切り施された透しの際には微かに鑢目の痕が残り、硬くなりがちな透の線に陰影を与え、深みのある錆色と共に、鉄のもう一つの性質である粘り強さを想起させる。切羽台を中心に非対称に配された花は唐花と呼ばれる想像上の花に似て古風な趣。京透を繊細な都好みとすれば尾張透は野趣に富む武家好み、とは昔から言われてきたことだが、尾張の力強さと洗練された意匠感覚が見事に融合している。   ◆棕櫚図鐔   http://p.tl/ZM1z 江戸時代中期 加賀国 赤銅石目地金彫込平象嵌 縦78.5ミリ横76.4ミリ切羽台厚さ4.5ミリ 上製落込桐箱入 わずかに耳を薄く造り込んだ極上質の赤銅地を石目地に仕上げ、金の平象嵌によって棕櫚の葉を優美に表現した作で、加賀金工の魅力が充満している。背景となる赤銅地が光の加減により、時に風合い柔らかな和紙にも、あるいは霜を置いた冬の枯れ葉のようにも見えるのは、細かく縦横無尽にうがたれた石目鏨の効果によるもの。表は左に少し空間を残して二枚の棕櫚を配し、裏に描いた一枚だけの葉は耳に掛かって葉先を表にのぞかせている。絶妙なバランス感覚と空間構成の巧みさに作者の感性の高さを窺い知ることができる。また、平象嵌による棕櫚の葉には、毛彫で葉脈が施されている。品格高く入念な作である。   ◆花文雁金透図鐔 http://p.tl/CSh4 はなもんかりがねすかしずつば 江戸時代初期 武蔵國江戸 鉄槌目地竪丸形陰透丸耳小肉鉄槌目竪丸形陰透丸耳古肉 縦:74.3cm 横:72.5cm 切羽台厚さ:6.2cm 特製落し込み桐箱入 附鑑定書 赤坂鐔は洒脱な意匠と鉄鍛えの優れた風合いをその最大の魅力とし、古来より京・尾張・肥後と並び賞される透かし鐔の名流として知られている。中でも、古赤坂に極められた作品は重ねが厚くどっしりとした迫力のある優品が多く、数寄者の好むところとなっている。 本作は大きく張り出した小柄櫃の形状とやや尖りごころのある切羽台、あるいは丸みを帯びた自然な耳の手際など古赤坂の特徴が顕著な作品。独特の光沢を放つ錬り鍛えられた鉄地には黒味を帯びた上質の黒錆びが付き、耳には随所に尾張鐔を想起させる鉄骨が隆起している。花文と雁金を巧みに配置して、曲線と直線を嫌味なく構成したバランス感覚に赤坂鐔の本領が十分に発揮されている。   ◆武鑑透図鐔  http://p.tl/q9VR ぶかんすかしずつば 江戸前期 鉄地丸形真鍮象嵌欄間透 86.4㍉横86.7㍉ 切羽台厚さ3.4㍉ 上製落し込み桐箱入 鉄地に真鍮を象嵌した平安城象嵌鐔を発展させ、唐草文と共に透かし文様を施した真鍮地金を象嵌した鐔を製作したのが、江戸時代初期の小池与四郎直正。この意匠と技法は広く好まれ、後に多くの工が独特の風合いを再現している。ここに紹介するぶかん武鑑透の鐔は、大振りの造り込みに地鉄鍛えは緻密で光沢があり、象嵌部分の脱落がなく健体を保ち、真鍮の色合いが明るく光沢が強い。   ◆千匹猿透図鐔 http://p.tl/Dcuj せんびきさるすかしずつば 江戸後期 鉄地撫角形肉彫地透 縦85ミリ横81.2ミリ 切羽台厚さ5ミリ 特製落し込み桐箱入 肥前國矢上にて活躍した光廣は、南蛮鐔の技法を大胆に取り入れた独特の作風で知られる優工。逍遥軒と号する光廣は初代の実弟にあたり、各地を遊歴して江戸にもその足跡を残している。本作は堅い鉄地に無数の抜穴を施し、猿の姿態を様々に変えて、戯れる群猿を表現した作品。それぞれの猿の目には微細な金の点象嵌を施し、猿の表情に一層の奥行きと臨場感を与えている。いかにも楽しげな猿達の表情を見ていると、鐔面からその鳴き声が聞こえてくるようである。   ◆白鳥図小柄  http://p.tl/6EVN  http://p.tl/apgE こづか 江戸時代後期 武蔵国江戸 赤銅魚子地高彫色絵 長さ97ミリ幅14.6ミリ 上製落込桐箱入 白鳥はその優美な姿や渡り鳥であることから、羽衣伝説や英雄不死伝説など説話の題材にされることが多い。刀装小道具には白鳥を描いた作例は比較的少なく、吉岡因幡介の小柄以外は多くを見ない。この小柄は白鳥が水辺に遊ぶ様子を題に採り、漆黒の赤銅地に銀の持ち味が生かされ、魚子地は粒が揃って力があり、主題は高彫に銀を主体に色絵表現し、嘴は赤銅地に金の色絵。吉岡因幡介は代々が幕府お抱えの金工で格式のある赤銅魚子地に高彫表現による家紋散し等を専らとするが、情感豊かなこのような図柄も得意とする作域である。   ◆鶉図目貫   http://p.tl/ctHh うずらずめぬき 江戸時代後期赤銅地容彫色絵平象嵌 左右27ミリ 遅塚久則(ちずかひさのり)は文治と称し、父は水戸支藩である守山藩の武士で、享保十五年江戸藩邸に生まる。三代および四代藩主に小姓として仕えるも、心の内には金工作品製作への希求心が潜んでいたのであろう、藩主より許されて大森英秀の門を叩く。業成って宝暦六年には主命により刀装金具を製作し技量の程を示す。金工細工の一方で本来の職を全うし、隠居以後も数々の名作を生み出している。濃密な彫り口による絢爛豪華で格式の高い作風で知られ、ことに鳥類に個性が顕著な優品をみる。得意の鶉の姿を自然のままに表現した掲載の目抜は、ふっくらとして丸みのある身体に特徴のある羽根模様を表した極めて実体的な作。地鉄は赤銅地ながら全体に金の色絵を施して重厚な色合いとし、赤銅平象嵌による漆黒の斑文も効果的。   ◆寿老人留守模様図笄 http://p.tl/POQg  じゅろうじんるすもようずこうがい 江戸後期 朧銀地鋤下彫色絵 長さ;211ミリ幅;12.5ミリ 長寿を意味する蝙蝠に霊芝は、寿老人に随伴する事物として鹿と共に描かれることが多い。ここに紹介する笄は、敢えて寿老人を描かずに蝙蝠と霊芝のみを図に採ることによって、その意味を知る者に寿老人の存在をより強く意識させるという留守模様の手法を以て表わした作。渋い色合いの朧銀地を磨地に仕上げ、高彫に赤銅の色絵と微細な毛彫により蝙蝠を写実表現し、裏面には鋤下彫の手法によって独特の奇態を見せる霊芝を描き、素銅と銀の色絵を加えて象徴的に表現している。大月光弘は光興の嫡子で、寛政七年の生まれ。父同様に江戸時代後期の京都を代表する名工である。   ◆山椒図目貫  http://p.tl/X3JF 室町時代 山銅地容彫 表左右36.2ミリ 裏左右37.5ミリ 上製落込桐箱入 附 鑑定書 山葵や丁子、この山椒など薬種の図は美濃彫様式の作品に多く、太古の時代からの自然の力に対する尊敬の念が窺え、作品を鑑賞する上においても興味が刺激される点でもある。この目貫は短刀拵に装着されていたものであろうか小振りながら緊張感に満ちている。薄手の山銅地を打ち出し強く腰高く彫り表わし、際端は内側に絞ってさらに量感を高め、表面には微細な鏨を打ち込んで山椒の葉と実を実体的に描き出している。美濃彫様式の特徴でもある、絡み合うように構成された唐草様の枝も繊細、所々配された銀の露象嵌が渋く光っている。裏行を観察すると、古風な露象嵌の打ち込みの様子が窺え、この点からも大いに興味が深まる。 いわれぬ侘びの境地を醸し出している。   ◆獅子図大小鐔  http://p.tl/JeDC 出羽国米沢 江戸後期 大縦78.4ミリ横74.9ミリ切羽台厚さ5.8ミリ 小縦72.4ミリ横69ミリ切羽台厚さ4.9ミリ 赤銅石目地竪丸形高彫据紋象嵌色絵金覆輪 上製大小落込桐箱入 六ミリを超す極肉高に表現された獅子像を据紋象嵌した、大小揃いの迫力ある鐔。縦に流れるようなしっとりとした石目地仕上げの赤銅地を竪丸形に造り込み、表には大小いずれも金と朧銀の獅子を対に布置し、特に大の方は、茎櫃を挟んで向かい合う獅子の目線を交差させて阿吽の相を鮮明にしている。毛繕いの様子に愛らしさが窺え、表の静なる表情に対して裏面のそれは全身に力を漲らせて跳躍する動感に満ちみちた姿。激しく浮き出た背骨、四肢の筋肉、鋭い牙と爪、毛彫が施された巻き毛と細部の描写、また、色絵処理も巧み。この鐔の作者宗壽(むねとし)は横谷宗壽(花押)と銘し、「米澤住」と居住地を刻する作品が遺されているところから米澤の金工であることが判明している。横谷一門に学んだもので、この大小揃いの大作でも同流派が見せる華麗な空間美を創出している。獅子図で揃えられた大小拵に装着し、より豪壮な世界を演出したい。

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